
取引先へのギフト贈答が持つ意味とは
取引先へのギフトは、単なる形式的な行為ではありません。
日頃の感謝を伝え、今後も良好な関係を続けていきたいという意思表示です。ビジネスシーンにおいて、言葉だけでは伝えきれない思いを形にする重要なコミュニケーション手段として、多くの企業が活用しています。適切なタイミングで心のこもったギフトを贈ることで、信頼関係はより強固なものになります。
一方で、マナーを守らないギフトは逆効果になる可能性もあります。相手企業の方針を無視した贈り物や、タイミングを誤った贈答は、せっかくの好意が台無しになってしまうことも。だからこそ、基本的なマナーと実践的なポイントを押さえておくことが大切なのです。
取引先ギフトで押さえるべき基本マナー

贈答品受け取り方針の事前確認が必須
ギフトを贈る前に、必ず確認すべきことがあります。
それは相手企業の贈答品受け取り方針です。企業によっては金品の授受を禁止している場合や、一定金額以上の贈答品を受け取らない方針を定めているケースがあります。特に公務員への贈答は法律で禁止されているため、絶対に避けなければなりません。事前に先方の総務部門や担当者に確認することで、不要なトラブルを防げます。
のしと包装の正しい使い方
ビジネスギフトでは「御中元」「御歳暮」「御礼」など、用途に応じた表書きを使用します。のし紙は紅白のもろわな結び(花結び)を選ぶのが一般的です。立場によって表書きを変える配慮も重要で、目上の方に暑中見舞いを贈る場合は「暑中お伺い」か「暑中御伺」とします。これは謙譲語である「伺う」を使うことで、相手への敬意を表せるためです。
包装にも気を配りましょう。風呂敷や手提げ袋に包んで持っていくと、汚れやホコリが付きにくくなります。ただし相手に渡す際は、相手の目の前で風呂敷から出し、品物だけを両手で持って正面に向けて渡すのがマナーです。
シーン別・取引先ギフトの選び方
お中元・お歳暮の基本ルール
お中元は地域によって時期が異なります。
関東・東北では7月初旬から15日、関西・中国・四国・九州では7月中旬から8月15日が一般的です。お歳暮は全国的に12月1日から20日頃までが適切とされています。適切な時期を過ぎてしまった場合でも「暑中見舞い」や「残暑見舞い」として贈ることで、遅れたことをお詫びしつつ感謝の気持ちを示すことができます。
お中元・お歳暮の予算相場は、一般的に5,000円から10,000円の範囲で贈られることが多いです。取引先の社員が多い場合は、分けやすい個包装の菓子類や飲料セットが適しています。少人数や個人の場合は、特別感を感じられる高級なアイテムを選ぶと喜ばれます。
出典ハーモニック「お中元の基本からマナーまで徹底解説!取引先に喜ばれるギフトの選び方」より作成
プロジェクト成功・取引継続への感謝ギフト
プロジェクトの成功や契約継続へのお礼として贈るギフトは、相手への感謝と今後の関係強化を目的としています。この場合の予算相場は3,000円から5,000円程度が一般的です。取引先の従業員全体で楽しめるよう、個包装のお菓子や飲み物など、分けやすいアイテムが喜ばれます。
販売御礼の場合も同様で、自社商品の販売に貢献いただいた企業や小売店に対して感謝の気持ちを込めてギフトを贈ります。特別感や話題性のあるもの、常温保管できて賞味期限にゆとりがあるものを選ぶことで、受け取る側に配慮した印象を与えることができます。

オフィス移転・周年記念のお祝いギフト
取引先のオフィス移転は、企業にとって新しい門出です。
移転祝いの相場は10,000円から20,000円程度とされています。関係性が深い取引先なら30,000円から50,000円程度、親しい起業家や経営者の場合は5,000円から10,000円程度を目安にするとよいでしょう。ただし、あまりに高額すぎる贈り物は相手を恐縮させてしまう可能性があるため注意が必要です。
移転祝いの定番は胡蝶蘭です。胡蝶蘭には「幸福がやってくる」という花言葉があり、開店・開業・就任祝いにもよく用いられます。また、鉢植えには「根付く」という意味合いもあり、「幸せが根付きますように」というメッセージにもなります。見た目も華やかで、新たな門出のお祝いに最適です。
出典内田洋行「オフィス移転のお祝いにおすすめの品物7選|お祝いのマナーや注意点」より作成
喜ばれるギフトアイテムの選び方
個包装で分けやすいお菓子が定番
会社を訪問する際に喜ばれる手土産は、やはり簡単に分けることができる個包装のもの。
特に、日持ちするクッキーやマドレーヌなどの焼き菓子は定番です。また、夏は涼しげなゼリーを持って行くなど、季節や相手方の好みに合わせて選ぶと気が利いた印象を与えることができます。相手方の好みがわからない場合は、奥様やお子さんなど、ご家族で楽しめるような手土産を選ぶと好印象につながります。
職場や部署など複数人に持っていく場合は、人数よりも少し多めに用意しておくと安心です。実際の人数よりも、少し多めに用意しておくことで、「足りなかった」という事態を避けられます。
出典ヨックモック「デキる営業マンになれる!ビジネス手土産の正しい渡し方と基本マナー」より作成
カタログギフトという選択肢
相手の好みがわからない場合や、より柔軟な選択肢を提供したい場合は、カタログギフトが効果的です。グルメ専門カタログや日本の名品を集めたカタログなど、様々な種類があります。受け取った方が自分の好みに合わせて選べるため、満足度が高まります。
近年では環境配慮型のカタログギフトも人気です。オーガニックフードやフェアトレード商品など、SDGsを意識した商品を集めたカタログは、企業の姿勢を示す上でも効果的です。

避けるべきアイテムと注意点
ビジネスギフトには避けるべきアイテムもあります。
まず、生鮮食品や賞味期限が短いものは避けましょう。受け取る側のスケジュールによっては、すぐに消費できない可能性があります。また、個人の趣味嗜好が強く反映されるアイテム(香水、アクセサリーなど)も、ビジネスシーンでは不適切です。
宗教的・文化的に配慮が必要なアイテムにも注意が必要です。特に海外企業との取引がある場合は、相手の文化背景を理解した上でギフトを選ぶことが重要です。また、競合他社の商品を贈ることも避けるべきです。
ギフトを贈る最適なタイミング
手土産を渡すベストタイミング
手土産を最も渡しやすいのは最初の挨拶のタイミングですが、実は「名刺交換、挨拶が終わったあと」が最もベストなタイミングと言われています。取引先の方に出会ってすぐ渡すのではなく、名刺交換や挨拶が終わって落ち着いたあと、ビジネスの話題に移る前のタイミングを見計らって渡すのが理想的です。
ただし、お礼やお詫びで訪問した場合は、最初に渡すのが良いとされているため、時と場合によって柔軟に対応しましょう。相手の状況を見ながら、最も適切なタイミングを判断することが大切です。
出典ヨックモック「デキる営業マンになれる!ビジネス手土産の正しい渡し方と基本マナー」より作成
移転祝いや周年記念の配送タイミング
オフィス移転のお祝いは、移転予定日の前日または当日に到着するように手配しましょう。前日や当日が難しい場合は、移転からおおよそ2週間以内を目安とします。それより遅れてしまう場合も、少なくとも1か月以内には届けられるようにしましょう。
ただし、移転当日は先方もバタバタしているため、翌日に届くようにしたほうがよい場合もあります。移転のスケジュールが遅れる可能性もあるため、先方の状況をよく確認してからお祝いを贈ることが大切です。移転を後から知った場合など、お祝いが遅くなるときは、まず手紙でお祝いのメッセージを伝えるとよいでしょう。
出典内田洋行「オフィス移転のお祝いにおすすめの品物7選|お祝いのマナーや注意点」より作成

ギフトに添える言葉とメッセージマナー
「つまらないものですが」はNG
相手にギフトを渡す際の決まり文句になっている、「つまらないものですが」は、もともとは謙遜の意味を込めて使われ始めた言葉です。
しかし、最近は、へり下りすぎだととらえられることがあるため、避けられる傾向があります。「心ばかりの品ですが」「お口に合うと嬉しいのですが」などのような控えめな言葉を添えると良いでしょう。相手への敬意を示しつつ、押し付けがましくない表現を心がけることが大切です。
出典ヨックモック「デキる営業マンになれる!ビジネス手土産の正しい渡し方と基本マナー」より作成
移転祝いのメッセージ例
オフィス移転祝いのメッセージを送る際は、お祝いの言葉とともに、今後のますますの発展を願う気持ちを込めましょう。「この度のオフィス移転、心よりお慶び申し上げます。新天地でのますますのご発展をお祈り申し上げます」といった文面が適切です。
訪問の意思を伝える場合は、「近日中にお伺いさせていただきたく存じます」などの一文を添えると、より丁寧な印象になります。手紙の文面で訪問の意思を伝え、実際に訪問するときに菓子折りなどを持参する形も好まれます。
食品ギフトを選ぶ際の注意点
賞味期限と保存方法の確認
食品ギフトを選ぶ際は、賞味期限が長く保存が簡単なものを選びましょう。
常温保管可能で賞味期限にゆとりがあるものを選ぶことで、受け取る側の負担を軽減できます。冷蔵・冷凍が必要なアイテムを贈る場合は、相手がすぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れられるよう、配送日時の確認が必須です。事前に先方のスケジュールを確認し、受け取りやすい日時を指定することが大切です。
アレルギーや食の制限への配慮
食品ギフトを選ぶ際は、アレルギーや食の制限にも配慮が必要です。特定のアレルギー物質を含む食品は避けるか、事前に確認することをおすすめします。また、宗教的な理由で特定の食品を避ける方もいるため、多様性に配慮した選択が求められます。
複数の選択肢があるカタログギフトや、様々な種類が入った詰め合わせなら、受け取る側が自分に合ったものを選べるため安心です。
まとめ:取引先ギフトで信頼関係を深めるために
取引先へのギフトは、ビジネス関係を良好に保つための重要なコミュニケーション手段です。
適切な予算相場を守り、シーンに合わせた選び方をすることで、相手への感謝と敬意を効果的に伝えることができます。お中元・お歳暮の時期や、移転祝い・周年記念のタイミングを押さえ、のしや表書きのマナーを守ることも大切です。個包装で分けやすいお菓子や、賞味期限に余裕がある食品ギフトは定番として喜ばれます。
一方で、相手企業の贈答品受け取り方針を事前に確認し、避けるべきアイテムを理解しておくことも重要です。「つまらないものですが」といった古い表現は避け、「心ばかりの品ですが」など控えめで丁寧な言葉を添えましょう。食品ギフトを選ぶ際は、アレルギーや食の制限への配慮も忘れずに。
ギフトは渡した瞬間がゴールではありません。その後の関係性をより深めるきっかけとして、相手の立場や状況を考慮した心のこもった贈り物を選ぶことが、長期的な信頼関係の構築につながります。

